- HOME
- 院長診療日記
「院長診療日記」のコーナーを新しく設けました。
このコーナーでは、泌尿器科の日常診療の中で患者さまに是非知っておいていただきたい事を、実際の事例をお示ししながら説明していきたいと思います。
尚、以下にご紹介する症例は、プライバシー保護のため、内容の一部を改変しております。
※前立腺がんを心配される患者さまへ
最近、前立腺がんの患者さまが増えています。
先日も、50代の患者さまが、健診でPSA値が高いと指摘され来院されました。排尿障害などの症状はありませんでした。
前立腺がんの腫瘍マーカーのPSAが、5.530(正常値は、4以下)と高値を示していました。1年前の健診でのPSA値は、1.700と正常でした。
腹部エコー検査にて、前立腺は体積が38ml(正常は20ml)と前立腺肥大を認めました。
さらに、前立腺がんのチェックのため、MRI検査をしていただきましたら、前立腺左葉に前立腺がんを疑う結節を認めました、リンパ節転移は見られませんでした。
そこで、患者さまと相談の上、精査のため、基幹病院へご紹介をいたしました。
基幹病院で、前立腺生検が行われ、前立腺がんと診断されました。
その後、ロボット支援前立腺摘除術(ダビンチ手術)を受けられました。
がんは全部取り切れ、周囲への転移もありませんでした。
その後、手術後の経過は良好に推移し、現在、社会復帰されています。
このように、前立腺がんが発見されても、手術で改善することが多く見られています。
そして、もし、種々の程度の進行が見られる前立腺がんであっても、その患者さまの状態に合わせて、抗がん剤や放射線療法などを組み合わせる事により、治療成績が非常に向上しています。
当院では、前立腺疾患の新患の方や前立腺で経過を見ている患者さまに対して、1カ月に50人ほどの方にPSA検査を行っています。
このうち、令和6年度1年間では、PSAが上昇したため、20人の方に前立腺MRI検査を受けていただいています。この20人のうち13人が前立腺がんの疑いで前立腺生検を受け、うち5人が前立腺がんと診断され治療を受けておられます。
前立腺がんを心配される方や、PSAが高いと指摘された方は、早めに、泌尿器科外来を受診されてはと思います。
※慢性腎臓病治療における新しい薬の登場とその恩恵
日本で、2014年4月、SGLT-2阻害剤という薬が発売されました。
この薬は、初め、糖尿病の治療薬として販売されましたが、その後慢性心不全にも効果があり、そして慢性腎臓病にも効果が見られる事が分かってきました。
当院でも、現在、腎機能が悪くて血清クレアチニン値が高い患者さまにこれ以上腎機能が悪くならない様にこの薬を使用しています。
これまで、長い間、腎臓そのものに効く薬がなく、私たちは、臨床の現場で非常に悔しい思いをしていました。
当院でも、腎機能が徐々に悪化し、血液透析に移行していく方を何人も見てきました。
しかし、このSGLT-2阻害剤(商品名:フォシーガ、ジャディアンスなど)という薬は直接腎臓に作用して効果を発揮し、腎機能の悪化を予防するため、まさに画期的な薬の登場という感じがします。
腎臓にある糸球体は、汚れた血液を濾過して尿を作る働きをしていますが、この糸球体の内圧が高くなると腎機能が低下していきます。
ところが、この薬は、糸球体内圧を下げることにより、腎臓を保護する作用を持っています。
当院でも、この薬を、慢性腎臓病、糖尿病、慢性心不全の患者さまに使っており、1カ月に110人くらいの方が服用しておられます。
実際に、当院でこの薬を使った効果を見ると、服用後、一時的にクレアチニンが軽度上昇しますがその後は、ほぼ腎機能が維持された状態が3~5年経っても続いています。
このような効果を実際に目の当たりにすると、患者さまも治療の励みになるし、治療する側もやり甲斐を感じています。
もし、健診などで、腎機能が悪いと言われた方、尿蛋白が陽性と言われた方は、是非一度病院を受診され、治療が必要かどうかのご相談をされてはと思います。
左から腎臓 尿細管 糸球体の模型です
※小児から青年期にかけて多い泌尿器の病気の方へ
幼少期(1歳から10歳くらい)によく見られるのは、包皮炎です。
おちんちんの先端が赤く腫れ、膿が出て、排尿の時に痛がります。
抗生物質のお薬を1週間飲み、局所に軟膏を塗ったりして治療します。
お風呂の時、包皮の部分をよく洗い清潔にする事が大切です。
包皮炎を繰り返していると、包皮の先端が固くなり完全包茎となり先で手術が必要となる事がありますので、包皮炎は早めに治療する事が必要です。
精巣(睾丸)は、両側の陰嚢内にそれぞれ1ずつありますが、片側の1つしかないと親御さんが気づき、来院される事が多いです。
また、別の病気で来院されていて、診察で偶然見つかることもあります。
これは、停留精巣と言います。赤ちゃんがお母さんのお腹にいる間は、精巣は腎臓の下にあります。そして生まれた時点では、精巣は陰嚢まで降りてきているのですが、それが降りてきていなくて、鼡径部や腹部内に留まっている状態をいいます。
停留精巣は、程度にもよりますが、鼡径部より上にある時は早めに手術をし精巣を陰嚢内に降ろします。
停留精巣のまま放置していると、その精巣が萎縮してしまい、将来不妊の原因になったり、また、まれに、がんが発生したりします。
停留精巣を心配した場合は、早めに受診されることをお勧めします。
先日も、6歳の子供さんの停留精巣が見つかり、基幹病院の小児外科で手術をしていただき、きれいに治る事ができました。
また、おへそから膿が出たり、膀胱に違和感があったりする症状で来院される方に、尿膜管遺残症という病気があります。
当院でも、これまでに、この病気の患者さまが3人ほど見つかっています。
お母さんのお腹にいる時に、胎児の膀胱とへその緒をつないでいる管を尿膜管といいます。胎児の尿を母胎へと流しています。
この尿膜管は、生まれた時には退縮して消えてしまいますが、これが消えずに残ってしまった状態を、尿膜管遺残症といいます。
症状としては、おへそから膿が出たり、腹痛、発熱があったりします。
治療は、遺残尿膜管に感染を起こしたり、将来、がん化する恐れもあるため、手術を行う事が多いです。
若い方が多いため、お腹にできるだけ傷の残らない様な方法で手術が行われています。
精巣上体炎は、精巣の上部にある精巣上体という場所に炎症を起こし腫れや痛みや熱が出る病気です。
抗生物質で治療をしますが、治るのに2週間から1カ月かかります。
陰嚢水腫は、陰嚢に水が溜まって腫れてきます。エコーで水の溜まりを確認し穿刺して水を抜きますが、何カ月かするとまた溜まってくるため、手術をする事もあります。
精巣腫瘍は、陰嚢が腫れて来院されますが、痛みが無いのが特徴です。
エコー検査やCT検査を行い、疑いがあれば、できるだけ早く手術を行います。
当院では、これまでに、5人の精巣腫瘍の患者さまが見つかり手術を受けていますが、手術後の経過も良好です。
以上の様に、泌尿器科では、幼少期から青年期にかけて特徴的な病気が、よく見られます。
何か気になる症状があった場合には、一度、泌尿器科外来へご相談されてはと思います。
※男性更年期障害を疑っている方へ
最近、自分は男性更年期障害(LOH症候群)ではないかと思い来院される方がわりと見られます。
外来に40歳代の男性が来院されました。
1年前より、全身倦怠感、気力低下があるとの事でした。
会社に勤めているのだけど、週末の土日になると倦怠感が強く一日中横になっていると言われます。
症状の強いときは次の週に仕事に行けない日があるとの事でした。
男性更年期障害問診票(AMSスコア)を記入していただきましたら、AMSスコア49点と中等度障害の所見でした。
問診項目の中では、不安になり疲れが出る、行動力が減退する、筋力が低下している、ゆううつな気分になる、性的能力の衰えがある、などの症状が強くありました。
血液検査では、貧血や肝障害などの内科的な異常はありませんでしたが、男性ホルモンである遊離テストステロン値が、5.1(正常値 11.8以上)と、低下していました。
遊離テストステロン値は、11.8以上が正常で、8.5~11.8は中間域、8.5以下が低下の判定になります。
この患者さまは、男性更年期障害と診断し、ご本人と相談の上、男性ホルモン注射(エナルモンデポー 250μg)を2週間に1回、計10回(1クール)行う事としました。
その後、これまでにこの注射を計3クール行ってきています。
注射を始めて約2年になりますが、症状的には波がありながらも、仕事には何とか休まずに行けるようになってきています。
一般に、男性更年期障害の症状には、集中力や意欲の低下、不安、抑うつ気分、疲労感、筋力低下、性欲低下などが見られます。
それらの症状をAMSスコアという問診票で点数化して診断の参考にしています。
男性ホルモン注射の治療効果には、筋肉量の増加、性機能の改善などが見られますがうつ症状の改善効果については、まだ、はっきりした結論は出ていません。
しかし、全体としては、AMS問診票の中の健康関連症状については、改善が見られています。
自分は、男性更年期障害ではないかとご心配の方は、一度診察を受けて相談されてみられてはと思います。
AMS問診票のダウンロードはこちら
からできます。

PDFをご覧になる際は、
Adobe Acrobat Readerが必要です。
※前立腺肥大症のある方へ
泌尿器科外来には、前立腺肥大症による夜間頻尿、排尿障害の症状のある方が来院されます。
1カ月に約130人の方が通院されています。
外来に、60歳代の方が来院されました。
以前より尿が出にくい症状はあったとの事ですが、2日前より30分おきに尿意がありトイレに行っても尿が少ししか出ないとの事でした。
更に、尿意切迫もあり、尿に行きたくなったら我慢できなくなり漏れそうになるとの症状でした。
腹部エコー検査にて、前立腺体積は84ml(正常は20ml)と4倍くらいに肥大し膀胱内に560mlの残尿も認めました。
前立腺がんを示す血液のPSA検査は、3.800と正常でした。
以上の所見から、尿閉に近い状態のため、導尿を行い600mlの尿を排出しました。
PSA値は、3.800と前立腺がんは無いので、前立腺を小さくする薬のアボルブと、セルニルトン、ユリーフを投与し、治療を開始しました。
その後、1カ月に1回通院されていますが、排尿障害も改善し、尿意切迫感もなくなりました。
初診から1年が経過した現在、前立腺の体積は37mlと半分以下に縮小し、残尿も90mlと減少してきています。
このように、前立腺肥大症による症状があっても、内服治療にて改善する方がかなりおられます。
尿が出にくかったり頻尿の症状のある方は、一度、泌尿器科外来を受診されてはと思います。
※性病を心配されている方へ
当院は、泌尿器科の診療を行っているため、性病を心配して来院される患者さまが最近増えています。1カ月に約15人前後の方が来院されます。
先日も、20歳代の男性が排尿痛にて来院されました。1週間前に風俗店へ行き性的接触があったとの事です。検尿検査にて、尿中白血球が(+)で、尿路感染を認めました。経過から、淋菌感染かクラミジア感染が疑われました。
検査は、まず、尿で淋菌、クラミジアのPCR検査を行います。しかし、この検査は結果が出るまでに1週間かかります。
そのため、症状のある場合はどの菌であっても効果のある薬で、その日から治療を開始しています。
また、必要に応じて梅毒の検査も行います。
治療開始から1週間以降に、再度受診していただいて検査結果の説明を行います。
もし、初診検査で、クラミジア陽性だった場合は、1週間の治療にて陰性になったかどうかの尿検査を行います。もし、陰性になっていなければ別の抗生剤を使って再度治療を行います。
この患者さまは、1回目の検査で、梅毒、淋菌は陰性だったもののクラミジアが陽性でした。
しかし、治療後の2回目の検査でクラミジア陰性になっており治癒と判定しました。
クラミジアは陽性のまま放置しておくと慢性化して色々な合併症を引き起こしますので注意が必要です。
また、最近問題になっているマイコプラズマ・ジェニタリウムによる性感染症もあります。
尿症状が中々取れない場合は、この菌の検査も行っています。
日常生活の中で性病の不安を感じた場合は、早めの受診をして不安を解消するようにいたしましょう。

頻尿・尿漏れのある方へ
泌尿器科外来には、尿の回数が多く尿もれもあり日々の生活に困っている方が随分と来られます。1カ月に約100人の方が通院されています。
しかし、このような方にも、うまくお薬を合わせると随分と良くなっていきます。
先日も、60歳代の女性が来院されました。
昼間尿の回数が多く、夜間も3~4回排尿に行くため不眠にも悩んでいました。
更に、尿もれもあるため、尿もれパッドを当てており1日に3~4回交換しているとの事でした。
腹部超音波検査では膀胱には残尿などの異常所見が無かったため、過活動膀胱による頻尿と尿もれの症状と考え、お薬による治療を開始しました。
膀胱の過敏性を取るため、頻尿に対してβ3刺激剤(商品名 ベオーバ)を使い、尿もれに対しては抗コリン剤(商品名 バップフォー)を使用します。
この患者さまは2週間目に来院された時は、頻尿も尿もれもほぼ改善し夜間は1回の排尿回数になり尿もれパッドを当てる事もなくなっておりました。
このように、お薬がうまく合うと症状が劇的に改善する場合がありますので、頻尿、尿もれで悩んでおられる方は、是非一度受診されることをお勧めいたします。
